プロジェクト [ 日本の固有植物 ]

日本の固有植物

2015年8月 1日

序章

小林英成(企画担当)

第3回企画テーマ「日本の固有植物」は2008年5月18日に開催された2008年度総会において正式に決定し、スタートしました。現在は倶楽部展で企画テーマ部門としての作品展示を続けながら、「日本の絶滅危惧植物図鑑」「日本の帰化植物図譜」と同様に図譜の出版を目指しています。

日本植物画倶楽部では、1998年より倶楽部独自のテーマを策定し活動を続けています。

それは、会員が自主的に制作・展示することで、会員が今日の環境問題を含めて植物を探求し、また、テーマに即した植物画展の開催や図譜の出版をすることによって、広く一般に植物への関心が高まることを願ってのことです。

第1回は「絶滅危惧植物」、第2回は「帰化植物」を取り上げ、そこで制作された会員の作品は、日本での巡回展のみならず、アメリカのワシントン、シカゴで展示され、また「日本の絶滅危惧植物図譜」「日本の帰化植物図譜」として出版されました。

この二つのテーマは、それぞれに関連性があるものであり、次のテーマの策定に当たっても、その点を考慮に入れて検討した上で第3回のテーマを「日本の固有植物」としました。

企画テーマ「日本の固有植物」について

「固有種」とは、特定の地域にだけ生息する生物の事であり、植物に関して言うならば、「日本の固有植物」といえば、世界の中で日本国内のみに分布自生する植物のことを意味します。これは、外来種である「帰化植物」(前回テーマ)とちょうど逆の存在です。

固有種の例をあげれば、まず日本特産の科として、世界的に貴重な樹木であるコウヤマキがあります。他に昔から木工や建築などに広く利用されてきたホオノキ、モミ、スギ、ヒノキ、世界遺産に登録された白神山地のブナなど多種多彩です。また、私達になじみの深い草本植物として、マツムシソウ、シラネアオイ、ヤマユリ、などといった美しい花を咲かせるものがあります。
以上の種は比較的広域に分布しているものですが、逆にオナガカンアオイ、サンショウバラ、ムニンツツジといった、ごく狭い地域のみに自生している固有種も数多く我が国には存在します。これらは前々回のテーマである「絶滅危惧種」に指定されているものがかなり多く、もし絶滅した場合は地球上から姿を消してしまう事になります。

★画像をクリックすると、この植物のギャラリーページへ飛びます。

【イラスト:コウヤマキ】
コウヤマキ
(コウヤマキ科)
【イラスト:ホオノキ】
ホオノキ
(モクレン科)
【イラスト:マツムシソウ】
マツムシソウ
(スイカズラ科)
【イラスト:オナガカンアオイ】
オナガカンアオイ
(ウマノスズクサ科)

企画テーマ「日本の固有植物」の意義

「日本の固有植物」は、日本のみならず世界的にも大変貴重な自然遺産です。しかし、実際には、関連図書もほとんど無い状態であり、私達は、自分達が暮らしている国土に存在する固有植物を知る機会をなかなか持てない状況なのです。

また、前回、前々回の企画テーマでの図譜制作においてお世話になっている大場秀章東京大学名誉教授からも随分前から取り組む事を勧められてきました。このことは、植物研究の分野でも、このテーマが重要である事を意味しています。それゆえに、このテーマを当会で取り組んでみる価値は十分にあるとの結論に至り、今までと同様に、会としてこのテーマで植物画の制作発表をすることにより、貴重な自然遺産である「日本固有の植物」の一般認識が少しでも高まるように鋭意取り組んで行きたいと考えました。

その後、2010年10月、日本で「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」が開催されましたが、その主テーマである「生物多様性」の中で重要な位置を占めるものとして「固有種」が取り上げられています。

企画テーマ決定から現在までの経過

2008年度総会において正式に企画テーマとして決定した「日本の固有植物」は、現在まで以下のような経過をたどっています。

2008年 6月 会報NEWS80号で参加者募集。
10月 参加者に固有リストと制作希望植物アンケート用紙発送。
11月 各参加者の担当植物決定通知と制作要項の発送。151名・232種。
2009年 3月 参加者追加募集。
8月 全参加者担当植物リスト、担当済み植物アイウエオ順リスト、参考資料ABの発送。164名・360種。
A.1解剖を毛嫌いすることなかれ 2なぜ5弁のヤマユリを受け入れないのか
(いずれも大場秀章先生の会誌「くさかや」への寄稿)
B.各参加者担当植物の図鑑(平凡社『日本の野生植物』)記載文と検索表。
2010年 3月 お知らせと作品コピー提出の呼びかけ、制作状況アンケート調査用紙、作画に関しての注意点、「日本の帰化植物図譜」の出版の際の全原画についての大場先生の監修コメントの分析からわかる注意点、の4文書の発送。
10月 愛知県・東山植物園にて、日本の固有植物展開催。
2011年 2月 東京都・ギャラリーくぼた での第13回日本植物画倶楽部東京展において、企画部門として原画を展示。
10月 国立科学博物館筑波実験植物園において、原画を展示。
2012年 3月 東京都・銀座アートホールでの第14回日本植物画倶楽部東京展(倶楽部創立20周年記念展)において、企画部門として原画を展示。
12月 愛知県名古屋市立東山植物園「ボタニカルアートで描く日本の固有植物展」において原画を展示。
2013年 2月 茨城県自然博物館「日本に残った植物、日本で生まれた植物」アートでみる日本の固有植物展において、原画を展示。

固有植物リストの変更と今後

企画テーマの決定から参加者募集となり、160名以上が参加し、上々の船出となった「日本の固有植物」でしたが、2010年になって問題が発生しました。

小幡和男企画担当理事より、これから出版される国立科学博物館制作の科博叢書シリーズ「日本の固有植物」出版の情報がもたらされ、その固有種リストによって、今現在、会員が担当している植物の中に科学博物館側では固有種とみなされないものが相当数存在する事が判明しました。

今回の企画の「固有種」リスト制作を依頼した時点では、日本国内には信頼に足る「日本の固有植物リスト」は存在しませんでした。この点については、企画スタートの段階で環境省制作の「レッドデータリスト」や「移入種リスト」という信頼のおけるリストが既に存在した前回と前々回とは大きく異なっています。

そこで今回の企画をスタートするに当たって、「日本の絶滅危惧植物図譜」、「日本の帰化植物図譜」の編集を手掛けた図鑑エキスパートである森弦一氏に無理を言ってお願いしまして、今から約30年前出版されたとはいえ現在でも総合的には最も信頼のおける文献である「日本の野生植物」平凡社に準拠したリストを特別に作成していただいたのです。ただし、森氏からは、これはあくまでも仮のリストであり、最終的には監修を担当するであろう大場先生が固有種かどうかを判定することになる旨は伝えられていました。もちろん今回の参加者にも事前に担当した植物が今後固有種から外される可能性があることを知らせてあります。よって、この点について担当理事としては、すみやかに企画をスタートさせるためにはやむを得ない措置であったと思っています。

確かに今回の事態により、すでに配分された植物の中に固有種でないものが含まれていたことは残念なことではあります。しかしながら、企画の前半の段階で国立科学博物館制作という現状では最も信頼のおけるリストを得ることができたことを幸いと積極的に考え、倶楽部として現行のリストを科学博物館のリストへと変更することとしました。

ただし、勝手に使用するわけにはいきませんので、大場先生に仲介の労を取っていただき、2010年末に科学博物館にリストの使用許可をいただきました。その過程でケガの功名とでも言いましょうか2011年秋に筑波実験植物園で開催される、日本の固有植物展に、会員により固有種の植物画展を展示する運びになった事は幸いでした。

このプロジェクトの記事:このページのみ

このページの上部へ▲