原生の森が危機に...(資料p8)

国土の70%を森林で被われている日本列島は、気候や地形の条件により暖温帯ではシイ・カシの照葉樹が、冷温帯のブナ中心とする落葉広葉樹、亜寒帯のエゾマツ・トドマツの針葉樹の森が分布しています。

【イラスト:トガサワラ】
トガサワラ(マツ科)
深山に生える常緑の高木、高さ30m。葉は線形で20〜25mm。鈍頭。横断面は扁平。花は4月。毬果は10月に熟し、下向きにつき、卵形で長さ4〜6cm。
森林伐採。

これら日本の原風景である原生の森に生育する植物が、森林伐採、大規模林道工事、ダム建設の開発によって絶滅が心配されています。戦後の拡大造林政策で極端な皆伐による人工林への転換を押し進めた結果、日本の自然植生の基層をなす原生林は全体の27%しか残されていません。その人工林も現在、間伐を必要とする時期にきているにもかかわらず、人手不足と安い輸入材に押されて、管理が行われていないために山林崩壊の原因にもなっています。またバブル期のリゾート法がスキー場やゴルフ場の開発を容易にし、森林破壊に拍車をかけてしまいました。

そのような危機を背景に国際森林年にあたる 1985年、ブナシンポジウムが開かれ白神山地のブナ原生林の伐採と保護問題をめぐり森林の保全に対する認識が高まったものの、東北を含む日本のブナ林は依然として大規模林道工事の建設による伐採が行われています。さらには、紀伊半島と四国の一部の原生林にしか生育していないマツ科のトガサワラは、パルプ材の伐採と杜撰な林道工事により絶滅が心配されています。原生の森とその中で生きる野生植物の保全を考えた場合、もうこれ以上の森林破壊は避けるべきでしょう。

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